2010年6月16日水曜日

6月5日、シンポジウムを開催しました

 当日は、都内のいくつもの大学からの学生を中心に、50人以上が参加しました!
 シンポジウム「私たちの環境サミット」は今年で3回目。東京農工大学の教室を借りての今回のテーマは、生物多様性と地球温暖化。2010年は国際生物多様性年であると同時に、「生物多様性条約第10回締約国会議」:COP10が名古屋で開かれる年。生物多様性とは?学生には何ができる?温暖化対策先進国の取り組みと、日本の取り組みの違いは?などを考え、話し合いました。4時間はあっという間に過ぎてしまいました。


 植物は日本全体の種の1/4にあたる、少なくとも1321種が確認されている高尾山。昆虫、鳥類もたくさんの種類、個体が生息しています。たった770haしかない、日本最小の国定公園に貴重な生物多様性が残されているのはなぜか、という話をしてくれたのは橋本良仁さん。「高尾山の自然を守る市民の会」や「公害・地球環境問題懇談会」などで活躍しています。
 高尾山の生物多様性は、特異ともいえる位置、地下水を保持する構造と何百年もかけて作られた豊かな土壌に支えられています。また信仰の中心として、防衛の要所として戦国時代の北条氏が守り、江戸時代には徳川直轄領として、近代には国有林から国定公園となり人の手によって守られてきたのだそうです。
 橋本さんは、パワーポイントで高尾山の植物や鳥類の豊かさを紹介してくれました。圏央道の工事によって枯れてしまった八王子市内の滝の写真などには会場から思わず声があがりました。圏央道トンネルは高尾山にも掘られていますが、「鞆の浦」の埋め立て再開発事業が裁判により中止になったこと、課題ははらみつつもともかく工事中止になった八ッ場ダムなど、流れが変わってきていることなどをあげながら、環境や生物多様性を市民の力で守ることができると話してくれました。

 橋本さんと同じく「高尾山の自然を守る市民の会」などで活躍する奥田さが子さんは、デンマークの市民運動や暮らしのあり方・自然の考え方を学ぶ中で得た、自然と共生する暮らしの中でこそ人間らしい暮らしができるという実感を語ってくれました。
 高尾山には、近年保水力が注目されているブナがわずかに自生しており、太平洋側では南限です。さらに、帰化植物はわずか5%程度しか侵入しておらず、豊かな生態系が保たれています。これを守っていける生活のあり方が求められているし、ぜひ考えてほしい、と呼びかけました。


 COP15に参加した学生が語ったのは「学生の力」。温暖化対策先進国と日本との違いを知り、仲間たちと学んでものごとを科学的に見る目を身につけることができたこと、その見方で世界と日本をみたときに、企業は「エコ」を売りにしているけど本当に環境のことを考えているのか、など社会の問題が見えてきたそうです。温暖化防止のためには個人の努力も必要だけれど、日本の家庭からのCO2排出量はわずか5%。仮に、夏場日本中のエアコンを消したとしても、総排出量の2%しか削減できません。しかしデンマークでは、町も道路も働き方も「人」が中心の社会で、経済成長をしながらCO2排出を減らすことに成功しており、排出量取引制度や環境税などの確かな政策、政府を後押しする圧倒的な市民の力がそれを実現させています。
 COP15参加をふくめ、デンマークで印象に残った3つの言葉があったそうです。10万人のワールドアクション、行進の終着点で参加者を前に同世代である21歳の女性がステージの上から「私たちや子ども達の未来を守るために、私たちは温暖化を抑止しなければなりません」と訴えていたのを聞いて心に訴える言葉を身につけたいと思ったこと、デンマークで働くエネルギーアドバイザーの方からの「あなた方学生が地球、人類の未来です!世界中の学生が運動をしてくれることが温暖化を止め、未来を守るのです」という日本の若者へのメッセージを届ける責任を大きく感じたこと、デンマーク在住の澤渡夏代さんに「日本の若い人も真剣に考えています。どうすれば日本は本当の環境先進国になるのでしょうか。」とたずね、「急いでもなにもできない。意見が違ったりするのは当たり前だからこそ、とことん話しあって。たくさんの人と話して、経験をつんで、自分の信じることを続けてほしい。」という答えをもらい、あせることはない、真実を伝え、みんなで考え答えをだしていきたいと思わず泣いてまったことを紹介しました。
 もう世界では多くの若者がリードしており、未来の子どもたち、人々のために私たち若者・学生が世界をリードしていくことが大切だと気付いたと語り、今こそ若者が行動しようと呼びかけました。そして環境を守ることは暮らし、農業、生物保護などの広い分野で結ばれるからこそ、その結ばれた絆が国際政治を動かすし、地球温暖化問題は世界中の人々とつながる問題だからこそ必ず解決できると信じています、と力強く訴えました。


 COP15に何度も参加してきた坂口明さんは、日本共産党の発行する「しんぶん赤旗」の記者。温暖化に対する日本と世界の取り組みについて話しました。また政府の「地球温暖化対策基本法案」の問題点と日本共産党の提出した同法案の抜本修正案を紹介しました。
 坂口さんはまず、温暖化懐疑論への反論を踏まえ、世界は問題が実際に大きくなる前に対処する「予防原則」に基づいて行動していることを示し、その必要性を説明しました。
 日本のCO2の50%がたった44社の企業(主に電力・鉄鋼)から排出されていますが、ここにこそ対策が必要だと具体的な数字をあげて明らかにしました。一方で政府は「低炭素社会の切り札」として原子力発電所を推進していますが、坂口さんは原発は技術的に未確立で安全性にまだ不安が大きく放射性廃棄物の処理方法も未確立であることや、日本が地震大国であること、ウランは輸入品で国産エネルギーではないこと、エネルギー効率も低いことなどの問題点をあげ、温暖化対策としてもふさわしくないと述べました。
 政府の法案では、実効性のある温暖化防止のための国際的な枠組と、温室効果ガス排出量の目標が合意されたときに初めて「25%削減」の目標が設定されるなど、取り組みの本気度が問われるような問題があることを説明。日本共産党の抜本修正案の「気温上昇を2度以内に抑える」ことを明記し、国際的な合意などの前提条件なしに30%削減すること、国と産業界の公的削減協定を結ぶこと、原発依存をやめて再生可能エネルギーをエネルギー全体の20%まで引き上げること、の4つのポイントについて解説しました。
 最後にCOP15の積極面や課題、そこからCOP16へ向かう世界の流れなどを解説。国際合意は簡単ではないからこそ、政府の法案のそれを待っていては国内の温暖化対策がますますおくれてしまうと改めて指摘し、大企業にも堂々とモノがいえる政治に転換することが温暖化対策前進のためにも必要だと話を結びました。


 分散討論にはシンポジストの橋本さん・奥田さん・坂口さんも参加してくれました!

 学生の感想を一部、紹介します。

「こういった他大の方々や講師の方々が来るシンポジウムというものに参加したことが無かったので、とても新鮮な気持ちで参加できました。土曜日に行われたことも助かりました!!次もぜひ参加したいです!!!」(3年)

「知らなかったことがたくさんあって、頭がパンクしそうでしたが良かったです。COPに興味を持ちました。高尾山が危ないと思いました。」(1年)

「話を聞いていて、海外では企業が積極的に環境活動に力を入れており、政治もそれに協力していっている。日本の企業も、もっと多くの企業が環境活動に力を入れるべきだと思うし、政治ももっと協力してやりやすくさせてあげるべきだと思いました。なぜ温暖化を防止しなければならないかが、話を聞いて少しでも分かったと思うのがよかったです。」(2年)

「現場の意見、政治の意見、学生の意見、それぞれの想いが聞けてよかった。」(3年)

「高尾山の身近な環境問題を初めて知り、なかなか動き出さない政府を動かせるのは私たちの力なのだと感じ、温暖化問題の現状を知れて、今日は大きな成果が上がったと思います。今日は参加してよかったです。」(2年)

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